舞人が入院して数日が経った
検査の結果も問題なく無事退院した舞人
桜井家に戻った彼だが問題が一つ残っていた それは・・・・・




「本当に俺はこの子達を愛していたのか・・・・?」





記憶喪失編外伝続編 償いと誓い 第2話





舞人は入院している間に、幾度となく訪れる希望たちから事情を聞いていた
だが彼には希望たちの記憶がまったく残っていなかった
そのため彼女たちの言葉を完全に信じることはできなかった
そして退院して帰宅した直後・・・・・

「とりあえず一人暮らしで考える時間をくれ・・・・」

と、舞人が言い出した
希望たちは勿論反対したが、結局舞人の好きなようにさせる事となった
皮肉にも忘れたのは希望たちの事だけなので一人暮らしには影響は出なかった
そして数日後・・・・・・・





―希望視点―

退院してもう1週間・・・・・
舞人君はまだ私たちの事を思い出せずにいるみたい
皆元気がなく家に居ても何か暗い雰囲気だし・・・・・

「早く帰ってきて、舞人君・・・・・」

思わず呟いた一言
だけど次の瞬間私は信じられない光景を目にしていた

「舞人君・・・・・!?」

私の目線の先には、私服の舞人君と私の知らない女性
そう、私たち以外の女性と仲良く腕を組んで歩いていく

「見たくないよぉ・・・ほかの人と舞人君なんて・・見たくないよぉ」

大切なものを失った絶望感
気がつけば私はただひたすら走っていた

「こんな・・・・こんな気持ちを舞人君は味わってたの・・・・?」

そして家に着き自分の部屋に入ると涙が止まらなくなっていた

「舞人君・・・・・やだよぉ・・・・・戻ってきて・・・・」

私たちが知らずに与えていた苦しみが今度は自分たちが喰らうことになるなんて・・・・・
私は・・・取り返しのつかないことをしてしまった
大切な人が去っていく寂しさと絶望感
これじゃ舞人君が自殺しかけるのも無理ないよ・・・・・・・

「ゾンミ?どうしたの」

いつも間にかつばさが入ってきて心配そうに見ていた
そして私の説明が終わるころにはつばさも顔を真っ青にしていた

「そんな・・・・・舞人・・・・・」

そのまま訪れる沈黙
私たちに出来る事は最悪の未来を否定することしかできなかった

(このまま別れるしかないの・・・・?嫌だ!!このままじゃ今までの私たちと一緒だよ!!)

どうすればいいのか分からないもどかしさ
結局何もいい案が思い浮かず夕食の時間になった・・・・・・・




―夕食時―

舞人君が居ない為暗い雰囲気の食事
私は食事を取りながら考え続けていた

(どうすれば舞人君の記憶を取り戻せるんだろう・・・・・)

そのことを考えていた私はある事を思い出した

「そ、そうだ!!」

突然立ち上がった私をビックリしながら眺める皆
けどそんな事に構ってる暇はなかった

「バトルだよ!!舞人君が見せてくれたあの本気の走り!!」

私の一言でハッとなる皆
こんな・・・・こんな大事なことを忘れてたなんて!!

「舞人君は根っからの走り屋だから挑戦されたら断らない。そこで私たちの走りを見てもらえば」

相手が舞人君だから実力差で一気に負けるリスクはあるけど・・・・
でもこのまま何もしないよりもずっといい!!

「そうね、私たちが記憶を取り戻すきっかけになったことだし」

つばさもこれに賛成する
すると・・・・

「私も異論はないわ。同じ過ちを繰り返すわけにはいかないし」
「私もです・・・・今度こそ舞人さんの支えになりたいですから」

ひかりさんやかぐらちゃんもその気になっている
最早だれも反対の声をあげる人はいなかった
今度こそ・・・・今度こそ!!

「行こう!! 今度こそ舞人君の支えになるために!!」
「「「「「「おぉー!!」」」」」」

そして私たちは舞人君の居る桜坂峠へと向かった
舞人君・・・・・・待ってて・・・・必ず助けてみせるよ・・・・・






―桜峠―

既に日も沈み、走り屋達が終結している桜峠
希望たちもここの常連のため、すぐに舞人を見つける事ができた

「ん・・・?あれ?なんで君たちがここに?」

不思議そうに目をキョトンとさせる舞人
希望たちはその態度に一瞬深い悲しみを覚えるがすぐに気持ちを切り替える

「私たちとバトルしてほしいんです」
「え?俺は別にいいけど・・・・・誰が出るんだ?」
「私が出ます」

そう言って前に出る希望
舞人は一瞬躊躇うが希望の決意を固めた瞳を見てその迷いを振り切ったようだ

「わかった。だが遠慮はしない。それが俺のポリシーだからな」
「望むところです!!」

スタートグリッドに車を合わせる両者
そして改めてお互いに自己紹介をする

「桜井舞人だ。これでもプロの端くれだからな。遠慮なくいかせてもらう」
「桜井希望です。貴方の走りは知ってますから・・・・全力でいきます」

握手を交わし車に乗り込む両者
スタート役は山彦がすることになった

「じゃあ行くぞー!!
 5
 4 
 3
 2
 1
 GO!!」





ギャギャギャギャギャギャ ウォオオオオオン






山彦の手が下りると同時にスタートする2台
まずは希望のZが前に出る
このとき、舞人は不思議な感覚にとらわれていた
今までに感じたことのある、一種の心地よい感覚に・・・・・・





END