久保勝の教師奮闘記 −『in SHUFFLE!』−
          written by 龍馬&隼人
第4話


勝が店内に入った真っ先に目に飛び込んできたのは、カウンターに立つ大男だった。
いきなり目に入ったものに驚き、勝はしばし呆然としてしまった。
つづいて店内を見渡すが、客は一人もいなかった。
そして、再びカウンターの大男に顔を向ける。すると、その男はにっこり笑って、

「そこに立っていないで、こっちに来て座りなよ。今日は日曜だから客は少ないんだ」

と勝の心を見透かしたように語りかけてきた。
勝もいつまでも立っている気は無かったので、男に言われるままカウンターの手前の席に座る。
勝は座って、また男をチラッと見る。近くで見ると、さらに大きく見える。
男は勝の視線に気づいたのか、勝に顔を向けて微笑みながら語りかけてきた。

「びっくりしたろ?こんな大男が、店のカウンターに立っていて。みんな最初は驚くんだよ、慣れたら気に しなくなるけどさ」

と笑いながら言う。勝はその話し方に、初対面なのに親近感を覚えた。そして、自分も笑いながら言葉を返す。

「そりゃ驚きましたよ。店に入ったら、いきなり目に飛び込んできましたから・・・」
「やっぱりね」

と二人は、いつのまにか親しそうに話していた。お互いに初対面で、名も知らない客とマスターの関係にもかかわらずに。それは二人の性格からきているのだろうが・・・。
しかし、途中で勝の腹の音が鳴り、そこで勝は自分が何しに立ち寄ったのかを思い出した。

「すいません・・・そろそろ注文いいッスか?」

男は苦笑いをしながら頷き、勝の注文を受ける。
しばらくして、注文の品を作って勝の前に差し出す。
そして、再び勝との雑談を開始する。

「そういえば、マスターの名前聞いてなかったッスね?なんて名前ッスか?」
「俺?俺は槙原耕介っていうんだ」
「へぇ、耕介さんっていうんですか。俺は久保勝っていいます」
「久保勝君かい?・・・あれっ?久保勝?・・・どこかで聞いたことがあるような・・・?」
「あっ、俺って実は「耕ちゃんっ!」・・・えっ?」

勝が耕介に自分の正体について説明しようとしたとき、勝の言葉をさえぎって、勝の背後から声が届いた。勝が驚いて後ろを振り返ると、そこには一人の女性が立っていた。
その姿を確認すると同時に、今度は耕介が声を上げた。

「瞳!帰ってくるときは、店から入るなって言っているだろう!」
「え〜、だって家のほうから帰るのって面倒くさいんだもん」
「だまらっしゃい!客の迷惑だろうがっ!」
「・・・それほどお客入って無いのに?」
「なんだとっ!」
「・・・・・・・」

いきなり口論を始めた二人を見て、勝はしばし呆然としてしまった。
耕介と女性はしばらく口論していたが、勝の存在に両者が気づき、そこで口論は途絶えた。
そして、耕介が申し訳なさそうに、勝に詫びた。

「ごめんな、勝君。君をほおって、いきなり口論をおっぱじめて・・・」
「私も謝るわ。ごめんなさい、見苦しいところをお見せして・・・」

勝はそこで我に返り、謝る二人にむかって、言葉を返した。

「いや、いいッスよ。そんな謝らなくっても・・・ただいきなりのことで、少し驚いただけッスから」
「そうかい?そういってくれると助かるよ・・・」
「いえいえ・・・・・それより、お二人はどのような関係で・・・?」
「「え?夫婦だけど?」」
「・・・・・・・・・・・え?」

一瞬時が止まってしまった勝。
しかし、瞳が続けて言う・・・

「本当よ?まだ新婚だけどね」
「・・・認めたくないが、そうらしい・・・」
「何か言ったかしら?耕ちゃん?(怒)」
「イイエナニモイッテマセン」
「よろしい(ニッコリ)」
「クッ・・・(涙)」

といつのまにか夫婦漫才を繰り広げる、耕介と瞳。勝はまた呆然としている。
しかし、今度は瞳が勝に尋ねてきた。

「ところで、さっき耕ちゃんがあなたのこと『勝くん』って呼んでたけど・・・?」
「ああ、耕介さんとは今日知り合ったばかりッスけど、話すうちに意気投合しちゃって。それで・・・」
「へ〜。じゃあ、勝・・・君でいいのかな?私と年同じくらいよね・・・?もしかして、格闘技とかやってる?」
「ええ。ボクシングをやってるッスよ?でも、良く分かったッスね・・・?」
「それはもう・・・。私も護身道やっているから。第一それほど鍛えられた体見たら分かるわ・・・・・って今ボクシングって言った?」

勝の言葉を聞いて、先程までと変わった表情を見せる瞳。勝と耕介も少し驚いた。
それで、勝は少し戸惑いながらも言葉を返す。

「言ったけど・・・それが?」
「おいおい瞳、どうしたんだ?」
「もしかして、プロボクシングの世界ランク1位の久保勝選手・・・?」
「えっ!?」

驚いた声を上げたのは耕介だった。瞳はじっと勝を見つめている。
勝は、この町にきて、ようやく自分のことを知っている人に出会えて感動していた。
しかし、ここは冷静を装おうとする。いくら嬉しくても、ここで舞いあがってしまっては、プロボクサーとしての誇りがなくなるからだ。

「そのとおりですよ」

そう淡々と答える勝。本当は今でも踊りだしたいくらい嬉しいのだが・・・。

「やっぱりね!ボクシングで久保選手ったら、凄く有名だし。それに、高校時代もインターハイで優勝してたしね?」
「え!?なんで知ってんの?」
「私も護身道で、インターハイ優勝したの。そのときに隣の会場で、ボクシングの決勝やってたし・・・」
「・・・なるほど」
「それに、いつだったか練習試合で海鳴に来たでしょ?そのときにも見たから・・・」
「ああ、あの1ラウンド10秒で相手を秒殺した試合か・・・」

といった具合で、勝と瞳の会話は進んでいった。耕介も合間合間に会話に参加していた。
しかし、時間の過ぎるのは早いもの・・・すでに午後6時を過ぎようとしていた。
耕介と瞳は、勝に夕食もここで食べないかと勧めたが、勝は黙って芙蓉家から外出していたので、さすがに稟たちが心配すると思い、その誘いを断った。また、耕介と瞳がサインを求めたので、二人にサインを書いて渡した。そのサインは、『さざなみ』の店内に飾られたことはいうまでもない・・・。
そうして、『さざなみ』を後にして、勝は芙蓉家へと帰宅した。
帰宅したとき、稟たちに「どこへ行っていたのか?」と詰め寄られたが、それを軽く流して、みんなで夕食を取る。そして、シャワーを浴びて、勝に指定された部屋に行き、布団に入る。
明日からとうとう教師生活が始まる。その新しく始まる生活には何が待っているのか?
そんなことを頭に浮かべながら、勝はゆっくりと眠りについていった。
・・・・・いびきを立てながら・・・・。


(続く・・・)
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<後書き>
−龍馬−
長編第4話です。
やっと、とらハ2のキャラの二人を出すことができました。(しかしまだ先は長い・・・)
そして、次回からようやく勝の教師生活が始まります。

しかし、今回も内容が薄い文章になってしまいました。
やっぱり長編は難しいです。文章の構成も大変だ・・・。
読みにくい作品かもしれませんが、こんな駄作を読んでくださった皆さんに感謝を。
俺ももっと努力して、いい作品が書けるように頑張りますんで、これからも応援してやってください。

それではまた次回。

−隼人−
やっと第4話に辿り着きました。
それでもまだ先は長いので・・・精一杯頑張ります。
完結は10話前後を予定してますんで、それまで読んで下さる皆様、お付き合いください。

ここしばらく、勉強ばっかしてるからなあ・・・小説書く時間作らないと!!!
それではまた次回でお会いしましょう!