校舎裏から教室に戻る通路を歩く俺。

「自分が思うまま、か・・・・・・・」

校舎裏で来栖先輩に言われた言葉を半濁する俺。
気がつけば自分のクラスの扉まで来ていた。
もう、覚悟を決めて行動するしかない。





「うし、契約したんだし覚悟を決めますか!」






IMITATION or TRUTH 第3話 






ガラガラと扉を開け教室へ入る。
すると、近くに居た八重樫が俺に気付き声をかける。

「おっすさくっち。どう?今日の自信の程は」
「まあまあだな。少なくとも赤点はあるまい」
「ほほ〜・・・・・・勉強したんだ」
「まぁな。んじゃ俺は最後の悪あがきといくので」
「がんばれ〜」

そして八重樫と別れ自分の席に着く。
隣を見れば星崎が教科書を見ながら黙々と復習していた。
とりあえず鞄を持っていってもらった礼を言っておく。

「星崎、鞄サンキュな」
「あ、うん。いいよ〜これくらい♪」

そう言いながら微笑む星崎はいつも通りの雰囲気だった。
俺はこれからの事にドキドキしつつも教科書を開き、最後の悪あがきをする。
そして・・・・・・・

キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン ガラガラガラッ

「よ〜し、全員教科書等を鞄にしまえ〜」

テスト用紙を持ってきた教師がそう言うと、全員が教科書をしまい始める。
勿論俺と星崎も例外ではなく、教科書をしまう。だが。

(桜井君、約束分かってるよね?)

星崎が目線でそう言ってきた。

(分かってる)

俺は頷いて了解の意を示す。
それを見た星崎はコクリと頷くと自分の真下の答案用紙に目線を移す。
さぁ、吉と出るか凶と出るか。
せいぜい、頑張ってみますかね・・・・・・・・












「お、終った・・・・・・・・」

放課後の、誰も居なくなった教室で一人呟く。
星崎との契約は今日一日だけなので、これで無事完了という事になる。
ここ桜学は赤点3つで夏休み補修という制度がある。
そして今日のテストは3教科で、全てが星崎が苦手とする教科。
なんとなくカンニングしたくなる理由が理解できた。

「さて、後は星崎が赤を取らないことを祈っておいてやるかな」

そう締めくくって席を立つ。
出口で靴を履き替え、校門を通り抜ける。
だが、その先に居たのは・・・・・・

「さ、桜井君・・・・・・・・」

顔どころか前身真っ赤の星崎だった。
俺はその様子を見て瞬時に契約のことを思い出す。

「ほ、星崎・・・・・・俺は「桜井君の部屋・・・・・いこ」・・・・え?」

そう言い終わると腕を絡めてくる星崎。
だが顔は依然として真っ赤なままで、よく見ると微かに腕が震えていた。
その様子は明らかに慣れていない雰囲気――――――――――いわば初体験である事を連想させる。
そして俺はというと先程から自分の腕に当たる柔らかな感触に、理性が吹き飛んでしまいそうだった。

「ほ、星崎・・・・・・お前本当にいいのか?俺は別に・・・・・」
「・・・・・・いいよ・・・・・・桜井君・・・・じゃなくて・・・・・・舞人君だったら・・・・・」
「・・・・・・後悔、するなよ?」
「・・・・・うん」

その言葉を最後に歩き出す俺たち。
その道のりは近いのか遠いのかよく分からなかった。
なにせ隣に居る星崎が凶悪なまでに可愛かったから。

「え、えと・・・・・・舞人君ってはじめてなのかな」
「あ、ああ・・・・・・・紛れもない初心者だ」
「そ、そうなんだ・・・・」
「・・・・・・なるべく痛くないようにするよ」
「・・・・・うん」

顔を真っ赤にしながら歩く事十数分。
無事に我が自宅へ到着。
だが、今日に限ってドアが凄く重く感じられた。

「・・・・・先、入れよ」
「う、うん・・・・・お邪魔しまーす・・・・・・」

ドアを開け星崎を中に入れ、周りをキョロキョロと見渡す。
・・・・・・ん?あれは・・・・・・?
後姿がなんとなく八重樫っぽかったけど・・・・・

「まさか、だな・・・・・・」

少し八重樫の事を考えるが、すぐに頭から消えていった。
なにせ、部屋に戻れば星崎が待っているから。
しかも、俺と初体験を迎えるために。

「・・・・・・・・・よし」

意を決して部屋に入る。
星崎はもうベットの上にちょこんと座っていた。
その様子は何だか可愛らしくもあった。

「・・・・・舞人君・・・・・・早く来て・・・・・私、舞人君と一つになりたい・・・・・・」

ベットの近くに寄った俺を上目遣いで誘う星崎。
俺はもうそのセリフだけで理性が吹き飛ぶ寸前だった。

「いいのか・・・・・・初めてが・・・・・こんな形で」
「・・・・・・私も最初はそう考えてた・・・・・だけど、もう嫌なの」
「・・・・嫌・・・?」
「自分の気持ちを押し殺して・・・・・好きな人から遠ざかるのはもう嫌っ!!」
「ほ、星崎・・・・・・・」

それは、星崎の慟哭だった。
恐らくは、ずっと溜め続けてきた何か。
それが俺の目の前で、一気に噴出していた。

「知ってる・・・・?舞人君が好きだって言う女の子居る事」
「い、いや・・・・・・・そんな事思いもしなかったし」
「舞人君がよく知ってる子だよ・・・・・・・・・それも、凄く身近な」
「・・・・っ!?ま、まさか・・・・・・やえ、がし・・・・・?」

俺が辛うじて絞り出した答えに涙を流しながら頷く星崎。
確かに、八重樫の態度はそういう感じにも見えない事もなかった。
だけど、確信が持てなかった。あまりにも八重樫は友達という感覚が強すぎたから。

「八重ちゃんは親友だから、応援してあげたかった。けど、それ以上に私は舞人君が好きだった」
「星崎・・・・・・」
「八重ちゃんを押しのける事になっても、舞人君の事だけは譲りたくないの!!」

そう言うと顔を手で覆い、泣き崩れる星崎。
俺はもう何も言えなかった。
そして同時に星崎に対する罪悪感が漲ってきた。
この子の思いに気付かず、無下にし続けてきたのは間違いなく俺なのだから。

「お願い・・・・・・舞人君じゃなきゃ嫌だよ・・・・・他の男となんて絶対に嫌っ!!」

その言葉を聞いた次の瞬間、俺は星崎を抱き締めていた。
そして自覚した。この思いはもう止まらないのだと。
星崎が好きだという思いは。

「ま・・・・・舞人君・・・・・?」
「ほし・・・・・いや・・・希望。本当に、本当に俺でいいんだな?」

俺の言葉に目を開いて驚く希望。
だが、俺は徐々にその表情から悲しみが消えていくように感じた。
そして。

「はい・・・・・舞人君なら、後悔する事はないから。世界でたった一人の好きな貴方なら」

真っ赤だけど、嬉しそうな表情の希望。
俺はコクリと頷きそっと希望を押し倒すと、できる限り優しくキスをした。
甘く、癖になりそうな感覚を、目を閉じて更に強く求める。
知らなかった。好きな人とのキスがこれほどまでに気持ちのいい事だったなんて。

「んぅ・・・・・・ん・・・・・」

舌を入れ、希望の舌と絡ませる。
たったそれだけの事なのに、頭の中が真っ白になりそうだった。
部屋に響き渡る淫らな水温がやけによく聞こえる。

「ん・・・・・んく・・・・・・ん・・・・はぁ・・・・」

口を離すと銀色の橋が出来た。
希望はもう目がトロンとして視点が合ってない。
かく言う俺も辛うじて理性が残っている状態だった。
希望の目を覗き込むと、コクリと頷いてくれた。

「いいよ・・・・・貴方の好きなようにして・・・・」
「ああ・・・・・・・優しくするから」
「・・・・・うん」

再び、希望に覆いかぶさる俺。
もう、希望の事しか考えられない。
それくらい希望は可愛くて、綺麗だった。

「やぁ・・・・・んくぅ・・・・・ああんっ!!」

性感帯を弄られ、嬌声を上げる希望。
シーツを力一杯掴んで耐える姿は、俺の理性をことごとく粉砕してくれた。
頭の中が真っ白になっていく。
頃合を見て、そろそろだと思った俺は希望を抱き締め耳元で呟く。




「一つに、なろう・・・・・・・・・・」




END