「ふぅ、今日はこんなもんかな・・・・・・・」 ディスプレイを見ながら一人呟く青年。 ふと青年が時計を見れば、表示された時刻は18:00となっていた。 PCの電源を落とし、窓に近づき外を眺める。 「そういえば今日はクリスマスかぁ・・・・・・・・」 イルミネーションと白い雪に彩られた街を見て一人呟く青年、通称ハーリーことマキビ=ハリ。 元ナデシコC所属のオペレーターにして、現在はとある会社のプログラマーである。 生来の真面目さと礼儀正しさに、コンピュータの処理能力を武器にして、今では所属する部門でエース格として頑張っている。 「ハーリー、今夜は予定あんのか?」 「特にないですね・・・・・・ま、家に帰ってのんびりします」 「おいおい、若いんだからナンパしにでも行ったらどーだ?お前の顔なら相手は選び放題だろうが」 「あ、あはは・・・・・・まぁ今は必要なしって事で」 「かーっ、もったいねー」 ハーリーは上司と談笑しながら上着を羽織る。だが・・・・・・ 「「「「とか言っておきながら女とデートだったりしたらただじゃおかねーぞハーリー・・・・」」」」 独身の先輩方から殺気の篭った視線を頂戴するハーリー。 数年前と比べてかなりモテるようになったハーリーは何かと嫉妬の視線を頂戴するようになっていた。 「あ、あはは・・・・・そろそろ帰りますね・・・・・お腹もすいたし・・・・お疲れ様でーす」 「「「お疲れー」」」 後頭部にでっかい冷や汗をかきながら、踵を返して出口に向かうハーリー。 だが次の瞬間、女性事務員の声が彼を呼び止める。 「あーっとハーリー君ちょっと待ったーっ、外線でお呼びかかってるよー。お・ん・な・の・こ・か・ら♪」 「「「「・・・・・なにぃ・・・・・・・?」」」」 「外線で女の子から・・・・・・?誰だろう・・・・・・・」 にわかに男性社員が殺気づくなか、ハーリーは窓際の席の受話器を取る。 彼は知らない。その電話が、後の彼の人生を大きく変えることを・・・・・・・ 「はい、お電話変わりましたマキビですが・・・・・・・」 再会は聖夜の中で 「でも、正直びっくりしましたよ・・・・・・・まさか此処に来てるとは思いませんでしたから」 「ふふっ、ハーリー君驚くだろうなと思って黙ってた甲斐がありました♪」 「はぁ・・・・・・勘弁してくださいよぉ・・・・・・」 溜息をつきながらガックリと肩を落とすハーリー。 それをクスクス笑いながら眺める女性。 「まったく・・・・・お願いですから事前に連絡くらい下さいよ」 「でも連絡したら面白くないじゃないですか♪」 「面白くないって・・・・・・・」 目の前の女性が放った言葉に更に肩を落とすハーリーと、鼻歌交じりで歩く女性。 ハーリーは泣きたいのをぐっと堪え、先ほどの会社の光景を思い返していた・・・・・・・・ ―数分前― 『もしもし、お久しぶりですね』 「はぁ・・・・えっと、どちら様でしょうか?」 『ふふっ、解りませんか?まぁ最後に会ったのが七年前ですしね』 「七年前・・・・・・?」 ハーリーは人差し指を口元に当て考え込む。 するとどうやら思い当たる事があったらしく驚愕の表情を浮かべる。 「っ!?・・・・・ま、まままままさかルリさんですか!?」 『(クスクス)はい、正解です♪』 かつての上司にして想い人のルリからの電話に驚くハーリー。 周りで聞き耳を立てていた者達も仕事の手を止めハーリーを取り囲むように集まってくる。 『さて、問題です。私は今何処にいるでしょう?』 「何処って・・・・・・自宅にいるんじゃ?」 『いえ、違いますよ♪』 「ええっ?それじゃあ何処に・・・・・・・」 『さぁ、何処でしょう?』 「ルリさぁ〜ん(泣)」 ルリの意地悪な回答に困り果てるハーリー。 周りで取り囲んでいる者も興味津々だ。 『どうしても知りたいですか?』 「教えてくださいよぉ(泣)」 『では、窓際に立って下を見てみて下さい♪』 ハーリーは何時の間にか集まっていた野次馬に驚きつつも、電話を切って窓際に立って下を見る(野次馬達も)。 すると、帽子を被り眼鏡をかけ、白のコートを身に着けた女性が手を振っていた。 ピシリと固まるハーリー。だが・・・・・・・ 「「「「はぁぁぁりぃぃぃぃ・・・・・・・」」」」 「え?・・・・・・・ひぃっ!?」 彼が後ろを振り返れば、其処には怒りのあまりうっすらとスタンド(幽波紋)を発動させた男性社員の面々が。 今にも『無駄無駄無駄無駄ァッ!!』と襲い掛かりそうな雰囲気が彼らから放たれている。 子供が見たら泣き出しそうな光景に、ハーリーも滝のような汗を流しながら顔を引きつらせていた。 「あ、あははははぁ・・・・・・・み、皆さんどうか落ち着いて・・・・・・(汗)」 「「「「落ち着けると思ってんのかテメェ・・・・・・この裏切り者めぇ・・・・・・・」」」」 「あ、あわわわわ・・・・・・・」 じりじりと間を詰める男性社員(スタンド付き)と窓にぶつかり逃げ場を失ったハーリー。しかし・・・・・・ 「ほらほらその辺にしといてやれ。下にいる子が凍えちまうぞ」 「「「「くぅっ・・・・・・(涙)」」」」 苦笑しながら見守っていた部長(既婚者)が助け舟を出す。 本気で悔しそうにしながら自分の席へ戻っていく男性社員達。 「あ、ありがとうございます部長」 「気にすんな。ほら、早く行け」 「は、はい!お疲れ様でしたーっ!!」 その言葉と共にハーリーは、最早社内では名物と化したハーリーダッシュを発動。 瞬く間に下に辿り着いたハーリーをルリが出迎え一緒に歩き始める。 「お疲れ様ですハーリー君。では、行きましょうか」 「い、行くって何処へですか・・・・・・?」 「折角のクリスマスなんですから勿論デートです♪さ、行きましょう」 「デ、デデデデデート!?僕とルリさんがですか!?決して嫌じゃないんですが突然なんでまた」 「問答無用です」 「ちょ、ちょっとルリさ・・・う、うわわ・・・・・・・・・」 顔を少々赤くしながらハーリーの腕を取り、文字通り引っ張っていくルリ。 困惑しながら連れて行かれるハーリーを見ていた社内の面々は同時に思ったという。 「「「「「見事に撃墜されたなハーリー・・・・・・」」」」」と・・・・・・・・・ ―そして現在― 「はぁ・・・・・こうなったら存分に楽しむことにします。折角のクリスマスですし」 「是非、そうしましょうハーリー君♪」 「はは・・・・・・・」 会社を後にして街に繰り出した2人。 ハーリーも最初こそ戸惑ったものの折角のお誘いなのだからと気を取り直していた。 「さて、何処から行きますか?」 「そうですねぇ・・・・・・」 ハーリーの言葉に考え込むルリ。 「とりあえず歩いてみて気になったお店に入ることにしましょうか」 「解りました。じゃああのブティック行ってみますか?」 その言葉を皮切りに始まるデート。まずブティックでは・・・・・・ 「ハーリー君、どうですか?ハーリー君が選んでくれた服ですが」 「・・・・・・ルリさん・・・・・・・グッジョブです!!!」 「そ、そこまで感動しなくても・・・・(嬉しいですけど)」 次にルリが密かに予約していたレストランでは 「本日はクリスマスですのでお二方に「あ〜ん」と食べさせ合って頂きます」 「はい、解ってます♪」 「ええっ!?」 「はい、ハーリー君。あ〜ん」 「あ、あ〜ん・・・・お、美味しい・・・」 「じゃあ私はこれを」 「え、えっと・・・・・あ、あ〜ん・・・・」 「あ〜ん・・・・・ん、美味しいです♪」 更に途中にあったアクセサリーの店では 「あ、これ可愛いイヤリングですね」 「本当ですね・・・・・・すみません、これ試しにつけてみたいんですが」 「あ、ご自由にどうぞお客様」 「ん・・・・・・・どうですかハーリー君」 「・・・・・すみませんこれ幾らですか?」 「は、ハーリー君?」 「バッチリです、グレイトです、最高です!」 「あ、あははは・・・・・・」 と、独身男性が見たら血涙間違いなしのクリスマスデートを存分に楽しんでいた。 そして。 「それでルリさん」 「なんですかハーリー君」 「ブティック行ったり食事したりと本当に楽しかったです・・・・・・が」 「が?」 「本当に・・・・・・・此処へ?」 ハーリーが指を指す建物は、この地方では最高級のホテル。 戸惑うのも無理はない。しかし・・・ 「はい、予約はとってありますので。行きましょう」 「は、はぁ・・・・・・・」 戸惑うハーリーを連れてフロントへ向かうルリ。 フロントで確認を済ませ部屋に入る2人。 ルリが予約した部屋は最高級スイートルームだけあって、内装も部屋から見える景色も格別な物であった。 そして荷物を置き、窓から見える夜景を暫し見つめる2人。 「やっと・・・・・ここまで来れました」 「え?」 ハーリーに寄りかかるように身を寄せ呟くルリ。 「ハーリー君が軍を辞めて七年・・・・・・・本当に、長かったです」 「ルリさん・・・・?」 困惑するハーリーはルリの顔を見る。 するとルリの目からは涙が零れていた。 「アキトさんとユリカさん、それにラピスと私の4人で暮らし始めて、楽しい毎日でした・・・・・でも」 「・・・・・でも?」 「それも最初の2年間だけでした・・・・・・何故だと思います?」 「・・・・・何故ですか?」 「ハーリー君が居なかったからですよ・・・・・・・私を常に見てくれていたハーリー君が」 その言葉を言った直後、ルリは顔を上げハーリーを見つめる。 「どうして、軍を辞めたんですか・・・・・・・?」 ルリは涙を流しながら真っ直ぐにハーリーを見つめ、問う。 するとハーリーは表情を歪ませ、暫しの沈黙の後絞り出すように返答した。 「自分が許せなかったんですよ・・・・・・自分を見てほしいが為に、ルリさんの思いを知ろうともせず、ただ駄々をこねていただけの自分が」 「ハーリー君・・・・」 「アキトさんが戻ってきた時、僕が見たことのない笑顔で喜ぶルリさんを見たとき、自分の中にどす黒い感情が渦巻いてるのが解ったんです」 「・・・・・嫉妬・・・・・ですか?」 「・・・・・はい」 ハーリーの目から零れ落ちる涙。 それは彼が長い間封じ込めていた物の表れ。 「暫くして自分を見つめ直した時愕然としました・・・・ルリさんを独占したいが為に行動してた自分が、許し難いほどに醜く感じたんです」 「だから軍を辞め、私から離れたんですね・・・・・自分が許せなかったから」 「・・・・はい。もっともっと自分を磨かなければルリさんには到底釣り合わない・・・・・・・そう、思ったんです」 そう言い終わると、顔を俯かせ、拳を握り締めるハーリー。 暫く沈黙する2人。だが・・・・・ 「今でも思います・・・・・まだ僕じゃルリさんにはつりあわな「ハーリー君」・・・え?」 「貴方がそう思うんなら、私はこう答えます。もう、十分です、と」 「ルリさん・・・・・」 「それに、私がもう我慢の限界なんです・・・・・ハーリー君が居てくれないと、私はまっすぐ歩けません」 「で、でも・・・・」 「自分でもビックリしてます・・・・まさか此処までハーリー君が好きだったなんて思ってませんでしたから」 その言葉とともにハーリーの胸に飛び込むルリ。 「自分勝手なのは解ってます・・・・・・だけど戻ってきてくださいハーリー君。もうこれ以上貴方が居ない事に耐えられないんです!」 「る、ルリさん・・・・・・」 「電子の妖精としてではなく、ありのままの私を見てくれるハーリー君が、私には必要なんですっ!!」 その言葉を最後に顔をハーリーの胸に埋め、両手に背中に回すルリ。 ハーリーは、ルリを抱きしめながら実感していた。 覚悟を決めるときが来たのだ、と。 「ルリさん・・・・・・本当に、僕で良いんですよね・・・・・・?」 「ハーリー君じゃなきゃ駄目です・・・・・・貴方以外の男性じゃ嫌なんです!」 「っ・・・・・・・・ルリさん!」 「きゃっ!!」 ハーリーはルリを抱き上げ、ベットにルリを横たわらせる。 「ルリさん・・・・・・・正直に言います。もう、我慢できません・・・・・・」 「・・・私もです・・・・・・ハーリー君の物になりたくてウズウズしてます・・・・・・」 目に涙を溜めながら、微笑むルリ。 ハーリーもまた、微笑を浮かべながらルリに覆いかぶさっていく。そして・・・・・・ 「ルリさん」 「ハーリー君」 「「愛しています」」 その後、激しく甘い時を過ごした二人はこう呟いた。 「「メリー クリスマス」」と・・・・・・・・・・・・・・・ END クリスマスSSいかがでしたでしょうか? ハーリー「ぼ、僕がルリさんと・・・・・・・(感動)」 ルリ「また全国のアキトXルリファンに喧嘩売るSS書きましたね」 それは数が多すぎてつまらないんだよ・・・・・ 翠「確かにハーリー君のSSは少ないですよねぇ」 華蓮「そう言われればそうよね」 作者も個人的にはハーリー君お気に入りだからね・・・・・さて、締めて皆で遊びに行こう!せーの・・・・ 「「「「「御意見、ご感想はBBSにお願いします!では!!」」」」」