一応芹エンドで事件後のお話です。
でも、犯人に刺されて入院していた唯奈は仕事に復帰しています。
 
 
 
今日は大晦日。
 
1年の最後の日だ。
 
街は大晦日のセールや笑い声で賑やかで、明日は正月休みだ。
 
だが、ここだけはそうはいかない。
 
そう。病院という場所だけは。
 
それは…此処  黒伸総合病院も同じである。
 
 
 
 
 
黒伸総合病院  正月は大変です
 
 
 
 
 
「拓哉〜っ!!おでんと焼き鳥買ってきたよ〜!!」
 
「寒いのにお疲れさん。」
 
「あっ、芹ちゃんお疲れ様。さっき私が頼んだピザも届いたわよ。」
 
「榊さん、お疲れ様。」
 
「今、お茶を入れますね。」
 
この病院に勤める看護婦である榊芹にここの医師である霧島拓哉と汽京紅葉と婦長はねぎらいの言葉をかけ、同じくここの看護婦である橘唯奈がお茶を入れる。
 
「せっかくの大晦日なのに当直だなんてボク達ついてないよね。」
 
芹はそう言ってぼやく。
 
「まあしょうがないわよ。二ヶ月前の殺人事件のせいで病院はすったもんだの状態なんだから。」
 
「おい、紅葉。」
 
紅葉のその一言で唯奈は暗い顔になる。
 
「…そういう事もありましたね。私もつい最近まで寝込んでましたし。」
 
そんな唯奈を見て紅葉は、
 
「ごめん。不謹慎すぎた。」
 
と素直に謝る。
 
「いえ、いいです。もう済んだ事ですし。それに、今日はすっごく大変ですから落ち込んではいられませんしね。」
 
唯奈はそう言うといつもの顔に戻る。
 
「そうだな。盆暮れの休みは家族持ち優先だからな。」
 
「そうね。私達独身者が頑張らないとね。」
 
「??」
 
拓哉と紅葉は唯奈のその言葉に頷くが、芹だけは訳が分からず首をかしげる。
 
「ねえ、拓哉。今日は大変ってどういう事?どう考えても大変そうには思えないんだけど。」
 
その時だった。
 
トントントン!!
 
「あっ、誰か来たみたいです。」
 
唯奈はそう言ってドアを開ける。
 

「バッチリキッチリ拓哉先生、お疲れ様です。」
 
「皆さんどうもお疲れ様です。」
 
ドアを開けて見た者は三原香澄とニ見真魚の二人の少女だった。
 
「あっ、それとこれ差し入れです。料亭のおせちですけどお父さんが持っていけって言ったので…良かったら。」
 
真魚はそう言うと三段重ねのおせちを拓哉に渡す。
 
「わあ、すっごく豪華。」
 
「真魚ちゃん、本当にいいの?」
 
「ええ、いいですよ。」
 
おせちの中身を見た芹達がはしゃぐ。だが、その時だった。
 
「あっ、ありがとう。でも…。」
 
「「うっ…。」」
 
「面会時間はとっくに過ぎてるから面会は許さないよ。」
 

「「ぎくっ!!」」
 
 
真魚と香澄は拓哉にそう言われて捕まった。そう。彼女達の本当の目的はこの病院に入院している美魚と木葉との面会だったのだ。
 
「す、すみません。」
 
「家が結構忙しかったので…。」
 
二人はそう言うと拓哉に謝る。だが…。
 
「拓哉、あまりカタいこと言わなくても…。」
 
「そうよ。二人とも特別室だから他の患者さんの迷惑になるわけでもないんだから…少しくらいは。」
 
芹と紅葉はそう言って拓哉を説得しようとする。
 
「……分かったよ。30分だけ目をつぶるからその間に面会をすませてよ。二人ともいいね?」
 
拓哉はそう言ってとうとう折れた。
 
「ありがとうございます。ススッとバシュッと行ってきます。」
 
「我侭言ってすみません。そして、ありがとうございます。」
 
二人はそう言うとそれぞれの目的地に向かった。
 

「じゃあ、せっかくだからいただきましょうか?」
 
「そうだね。食べましょうか。」
 
唯奈のその一言からおせちを食べる事になったが…。
 
「じゃあ、芹ちゃん。乾杯の音頭をお願いね。」
 
「えっ、ボク?音頭だったらボクよりも…拓哉とかがやった方がいいんじゃ…。」
 
「俺は構わんぞ。」
 
「えっ!?」
 
「そういう事で芹ちゃんお願いね。」
 
そういう事で芹が乾杯の音頭をとる事になった。
 
「じゃあ、今年は殺人事件とか色々ありましたが…皆さんお疲れ様でした。それでは、かんぱ〜〜……」
 
芹が最後の「い」を言おうとしたその時だった。
 
皆、芹の乾杯の音頭を待たずにおせちを食べていた。
 

あ――っつ!?フライング!?」
 

芹は絶叫した。
 
「みっ、みんな汚いよ。乾杯の音頭を無視して食べ始めるなんて。」
 
芹はそう言って怒る。
 
「芹ちゃん、怒らないでよ。私のピザあげるから。」
 
「おでんと焼き鳥も全部いいからね。」
 
「ダメ。ボクもおせちがいい!!」
 
紅葉と婦長はそう言うが芹の怒りは治まらない。そして…。
 
「あっ、橘さん。そのエビ狙ってたのに〜!!」
 
いつも優しい唯奈まで芹の目をごまかしておせちを食べていた。
 
「静かにしろよ。ここ病院なんだから。それに、出遅れる方が悪いんだろ。」
 
「うっ…確かにそうだけど。って、拓哉までいつの間に〜。」
 
そう。拓哉も堂々とおせちを食べていた。
 
「だから、静かにしろって。何たって今日は…。」
 
その時だった。
 
TRRRRRRR!!
 
電話が鳴ったので唯奈がとる。
 
「…はい。そうですか。分かりました。」
 
唯奈はそう言って受話器を元に戻す。そして…
 
「救急車の受け入れ要請です!!」
 
唯奈のその一言から全ては始まった。
 

数分後…救急車が来て担架に乗せられた患者が運ばれてきた。
 
「患者は20歳男性。意識レベルU−100!!」
 
「新田!!」
 
「和彦しっかりしろ!!」
 
患者の友人らしきつきそいの青年2人が患者に必死で声をかける。そして…
 
「す、すいません。俺達大学の同級生なんですが…。」
 
「こいつ、この前失恋したから正月祝いの席でヤケ酒して、そしたら急にぐったりしちゃって…。」
 
紅葉はつきそい2人のその言葉から患者が倒れた原因を割り出す。
 
「急性アル中ね。芹ちゃん、ソリタT3 500ml!!」
 
「はい。」
 
「それとたっくん。導尿(尿道に管を入れて強制的に尿を排出させる事)お願いね。」
 
「分かった。」
 
二人はそう返事をして処置を開始した。
 
そして患者の処置を終えてから数分後…
 
「救急車 後2台来ます!!火傷と外傷患者!!」
 
「えっ…今からおせちを食べようと思ったのに。」
 
芹は唯奈のその言葉を聞いてガッカリして拓哉の元に向かう。
 
だが、その時だった。
 
「もう1台急性アル中の患者さんです!!」
 
唯奈の患者追加の連絡を聞いて芹は拓哉に質問する。
 
「ちょ、ちょっと待ってよ。何でこんなに忙しいの!?」
 
「人間、浮ついてる時ほど注意力が落ちるからな。大晦日と正月はいつもこんなもんさ。」
 
「そうよ。現に1年前もこうだったし。」
 
拓哉と紅葉は芹の質問に答えながら指示を送る。
 
「急性アル中患者を第2処置室へ!!」
 
「火傷の患者は…やばいわね。私がオペするわ。婦長、オペスタッフの手配をお願い。」
 
「はい。」
 
紅葉はそう言うとオペ室に向かう。
 
「あっ、ボクは…?」
 
「芹ちゃんはここで急患の処置をやってるたっくんのサポートをお願い。」
 
「はい。」
 
芹はそう言って頷く。だが…
 
「芹、急患はまだまだ来るぞ覚悟しろよ!!」
 

(うっ…うそ―――っ!!)
 

拓哉のその言葉を聞いて芹は心の中で悲鳴をあげた。
 

それから4時間45分後…
 
「はあ…やっと落ち着いた。」
 
芹はそう言って壁に掛かっている時計を見ると「4時15分」になっていた。
 
「でも…これでやっとおせちが食べられるよ。」
 
そう言いながら重箱に箸を伸ばそうとしたその時だった。
 
「榊さん、急患です!!」
 
「えっ、又!?」
 
「はい、サポートをお願いします。」
 
「はあ〜ぃ。(涙)」
 
芹は泣きながら拓哉達の元へと向かった。
 

それから……
 
「やれやれ…やっと一段落ついたな。」
 
「そうだね…。」
 
芹はおせちを食べるのを一時中断して頷く。
 
「でも、みんながお酒飲んで浮かれている時に徹夜で働かなきゃなんなんないて…因果な商売だね。それに、おなかもすくし…。」
 
「因果な商売って…豊かよ。」
 
拓哉は芹のその言葉に呆れる。
 
「だってさ…。」
 
「ふう…。」
 
拓哉はそんな芹を見て溜め息をつく。そして…。
 
「でもな…芹。いい事もあるんだぞ。」
 
拓哉はそう言って窓際へと移動する。そして、芹も彼に合わせて窓際へと移動した。そこには……
 
「なっ!!初日の出。ずっと起きてるから絶対見逃さないだろ。」
 
「うん!!」
 
芹は笑顔で頷く。そして…
 
「拓哉…今年もよろしくね。」
 
「ああ…こっちもよろしく。」
 
二人はそう言って握手をしようとしたその時だった。
 
外から複数の叫び声が聞こえてきた。
 

「ひっ、ひぃ〜っ!!」
 
「涼太君、待ちなさ〜い!!」
 
「待て〜涼太!!」
 
「「どっちが本命なの!?新年である今日こそ結論出して!!」」
 
「だ、誰か助けて〜!!」
 
茶髪の少年が長い黒髪にリボンをつけている少女とポニーテールの少女に追いかけられて病院の中庭を爆走していた。
 

「あはっ、あの3人又やってる。正月なのに。」
 
芹は外の様子を見て笑う。
 
「芹、あの3人知ってるのか?」
 
「うん。涼太君と沙佳ちゃんとユウちゃん。この近辺では有名なトリオだよ。」
 
「そうか…大変だな。特に涼太君が。」
 
「何か自分みたいで…?」
 
「ああ…。」
 
拓哉はそう言って溜め息をつく。
 
「でも、この調子だと今年も色々ありそうだな。去年は去年で色々あったけど…。」
 
「そうだね。でも、大丈夫だよ。あの事件も乗り切れたんだし…。」
 
芹は笑顔で言う。
 
「そうだな。」
 
俺もそれに笑顔で答えた。手を繋いで。
 
そして…俺達は同時に言った。
 
「「今年もよろしくお願いします!!」」
 

〜おわり〜
 
 
 
あとがき
 
どうも菩提樹です。ここのHPに投稿するのは初めてですが、正月の時に実際に私が実際に体験した出来事を元にして書いてみました。(ドリカム聴きながら)でも、黒伸総合病院ってどういう病院なのですかね?お正月SSなので救急指定病院みたいに書きましたが。
遅くなりましたがあけましておめでとうございます。そして、今年もよろしくお願いします。